湯船から



855 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/06/10 01:32
あれはまだ、私がその小さな会社に入ったばかりの頃のできごとでした。
従業員は全部で10人ぐらいの家族的な雰囲気の、なかなか良い会社でした。
ある日、慰安旅行で温泉にいきました。平日にわざわざ会社を休業してやって
来たかいがあって、我々の他には数人しか泊まり客はいないので、まるで貸し切りのようす。
おきまりの宴会も終わり、旅館のバーで先輩たちと飲んでいましたが、
当時若かった私は、飲みすぎたためか眠くなってしまい。
「すみません、僕は先にやすませてもらいます。」
そう言って席を立ちました
「まだ、早いよもう少し付き合えよ。」「もっと飲んでいけよ。」
そんな声を無視して部屋に戻りました。ふとんは敷いてありましたが、
だれもいません。しかし睡魔には勝てず眠ってしまいました。
しばらくして目を覚ますと、夜中の二時ごろでした。何人か寝ていましたが、
まだ、出かけている人もいるらしく、空きふとんもいくつかありました。
また寝ようとしましたが、目が冴えて眠れません。どうするか、
そうだ、風呂に行こうと思いました。
タオルを手にして旅館の明るい廊下を歩いていきました。旅館の人に会ったので
尋ねました。
「まだ、お風呂開いていますよね。」「はい、24時間あいています。」
再び廊下を進み、風呂場に着きました。脱衣所で浴衣を脱いでタオルを持って
湯船の方のとびらを開けました。誰もいない事を期待していましたが、手前に
並んでいるシャワーと蛇口のある場所に、太ったおじさんが髭を剃っていました。
かるく会釈をしてすこし離れた、入り口のすぐ側のところで身体を洗ってから、
風呂に入りました。

851 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:03/06/10 01:30
他には誰もいないので、のびのびとつかっていました。シャンプーもしようと
湯船からあがりました。シャワーのところまで行き、椅子に腰掛けた時、
なにげなく、おじさんを見るとまだ髭を剃っている。ずいぶん丁寧だな。
そう思い、視線をおじさんの目の前の鏡に移すと、その中に妙なものが見えました。
湯船の端に黒いものがある。うしろを振り向くと湯船には何もありません。
また、鏡を見ると、湯船から両手が這うように出ている、黒いのは頭のようです。
顔は見えません、あわてて湯船を見ても誰もいません。鏡をのぞくと、
右手を前に出し身体をズズズとひきずる。次に左手を前してまたズズズと身体をひきずり、
少しずつおじさんに近づいていきます。湯船を見ても、何もありません。
そのうえ鏡の中のそれは右手に何かを握っています。カミソリです、丁度床屋さんで使うような。
それを手に握り、ズル、ズルとおじさんににじり寄ります。
しかし、おじさんには、見えてないのか、平気で髭を剃り続けています。湯船を見ても誰もいません。
無我夢中で立ち上がり、脱衣所に戻りとびらを思いっきり閉めました。
間もなく、おじさんの悲鳴が聞こえるはずだ。いそいで逃げろ、心の声が叫ぶ。
あったまっているはずの身体には鳥肌がたっています。
しかし、何の音もしない、早く逃げなくては、あぶないぞ、大変だぞ、しかし、静寂。
何故か、とびらを開けてみたい、そんな誘惑がしました。走って逃げろ、心の声がします。
手がとびらにかかっています。そして、手にちからが入り、ガラリと音をたてて開けました。
誰もいません、おじさんも、得体の知れない、あの物体も。
今度こそ、浴衣を必死にはおって、自分の部屋に戻りました。
その後、その会社は辞めて現在はちがう仕事をしています。結婚し、妻から、
「温泉に行きましょう。」と言われても、その時はいいよと言っても、何だかんだ、理由をつけ
絶対にどこの温泉にも行きません。この話も今まで誰にも話した事はありません。
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2017-09-08 22:04 : 怖い話 : コメント : 0 :
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